わっさわさ

セカンドシーズン

子持ちししゃもはショートショートの夢を見る@ジュリ

7月の頭から静岡の不妊治療の病院に通い始めて、本日採卵が終わった。初診から採卵まで2ヶ月かかったので、国内に居られる期間に限りがある私は途中やきもきせんでもなかったけど、その度に「体の状態を一つ一つ明らかにして、治療を進めるのが一番の近道だ。急がず、粛々と出来ることをやるしかない。」と何度も自分に言い聞かせて頑張ってきたから、今日は緊張の糸が切れて脱力している。

 

今回は、18個の卵子が取れてここからどれだけ胚盤胞まで成長してくれるかは分からないけれど、年齢的にも環境的にも採卵をするのはこれが最後だろうな。海外での不妊治療の状況はきちんと調べていないけれど言語面・金銭面で恐らく難しいだろうし、駐在が終わって帰国する頃にはいくら体外受精でも妊娠/出産は難しくなる年齢になってしまっている。おまけに夫の精子は、自然妊娠は不可能な数値だし。

ただ、もし今回の結果が駄目でも後悔はないくらい、身体も心も痛めつけて頑張ったので治療を終えることになったら盛大な慰労会を催したいくらいの気持ちだ。

 

前回の採卵の時も同じ状況だったのだけれど、採卵の5日前くらいからとにかくお腹が痛くて、子宮に鉛の釘を打ち込まれたような鈍痛が常に付きまとい、おまけに毎日ホルモン剤を注射するものだから日に日に痛みは強くなり、ここ数日は「今全力疾走したら間違いなく死ねるな」ということしか考えられなかった。そんな状況でも、子供はお構いなしに私のお腹に容赦ないキックをお見舞いしてくるので、何度も「はい、今子宮が破裂しました。もうすぐ死にます。」と客観的に実況をし、何とか痛みや怒りを消化させていたから、とりあえず今はその痛みから解き放たれたことにこの上ない喜びを感じている。

自分の体はどこも悪くないのに、ホルモン剤を打ちまくってお腹をパンパンに張らせてる様子がなんだか子持ちししゃもみたいに思えて、悲しくなったりもしたけれど。

 

前回の不妊治療は、働きながら通院していたのでスケジュールの調整が難しく、職場に何度も頭を下げて時間を捻出していたから精神的にとてもしんどかったけれど、今回は時間の余裕がある専業主婦だし余裕~♪なんて思っていた。が、全然違った。

結局一番のストレスの原因は、私が医者の前で広げたくもない股を広げたり、連日注射によって痛みを感じたりすることに夫が全く無関心であることなんだなと実感した。乱暴な言い方をすれば、夫の精子が正常ならば私がこんな痛みや屈辱を受ける必要はなかったのに、そのことに対して夫は気に病むこともなく治療内容を知ろうとすることもなく自分の体質を改善しようともしない、ただただ「自分は関係ない」というスタンスを貫いているので、私は夫婦生活を存続させるために夫の給料で散財しまくっている。

 

不妊治療に関しては、夫のことを殺したいくらい恨んでいて、これから先どんなに時間が経っても夫のことは許せないだろうなと思う。子供を産んだ今でも、不妊治療をしていた時の書類を見ると涙が止まらなくなってしまうし、常に「私は一人きりでよく頑張った。この子は私一人で産んだのだ。」と思っている。夫には精子を提供してもらったことだけは感謝しているけどそれ以外のことは何もしてもらっていない。時間もお金も全部自分で段取りしたもの。

 

今日採卵を終えた後、麻酔のせいか短い夢を沢山見たのだけれど、その内の一つにうちの子供と同じくらいの歳の女の子がとても悲しそうにしていた夢があって、私が「悲しいならうちにおいで、一緒に遊ぼうよ。」と声をかけたら嬉しそうに笑ってくれたシーンが何故だか忘れられない。

もし、私がまた子供を産む日が来るのなら、あの子を産みたいな。一緒に遊ぼう、と言った約束を果たしたい。