わっさわさ

セカンドシーズン

出産に立ちはだかる壁(mm)

今朝、コロナに罹患した妊婦さんの搬送先が見つからずに子供を自宅で出産し、早産だったため赤ちゃんが死んでしまったというニュースを読んで震えた。

 

自分が育ってきた日本という国でこのような事が起きてしまうなんて、もう政治は何も助けてくれないんだ。現場の救急隊員の方の尽力はあっただろうけど、結局はすべて現場まかせで、大元の大きなルールを変えていないから、もう対処できる限界を超えてしまっているんだろう。

 

私は商売している家で育っているので、現場と経営陣の乖離と怖さをよく知っているつもりでいる。サービス業なので命にかかわる事はないが、最初にルールを作って「こうやっていこう!」なんて言っていても、現場に出てみると悲惨という光景は今まで何度も見てきた。結局、机上の空論で解決することは少なくて、経営者や責任者が現場に出て初めて、問題点がよく見えてきて、現場で走り回る人達は目の前の対処でいっぱいいっぱいということはよくある。現場が一番しんどいけど、現場が一番顧客に近い場所で大切だから、そこから目を背けてはいけないのに。今の日本はその集大成という感じがする。これ以上状況が好転しないのなら、総理大臣や政治家は1日救急隊員でもやるべきではないのか。

 

私は今妊娠7ヶ月の妊婦で、妊婦だから出産にかかわることは助けてもらえるんじゃないかと何となく信じていた部分があったけれど、今日のニュースでこれはもう守ってもらえることなどないなと感じた。通っている産院でも、コロナになったら面倒は見られませんの一言だった。

 

この妊娠に辿り着くまで、気が遠くなるような時間と費用を費やしてきた。振り返るだけで涙が出そうになってくる。夫と結婚して早いうちから子供が欲しかった私たちは、結婚してすぐにブライダルチェックも受けに行った。そこで子どもができにくいと指摘され、早々から病院に通っていた。

 

不妊治療のフルコースともいえる、タイミング法、人工授精、体外受精、顕微授精をすべて経験し、しかも1度で簡単に子どもを授かるわけもなく、何度も病院を変え、自分たちで調べ、薬を変え、体質改善のために漢方薬サプリメントを飲み、食事を変えた。オプションで勧められた検査はどんなに痛かろうが高かろうが全て受けて、もうこれ以上できることはないだろうというところまできて、良い先生と出会いやっと赤ちゃんをお腹に授かった。3年間、県外の病院まで新幹線で通い費用は何百万円とかかった。夫はいつも協力的で、採卵や移植の時は仕事を抜けて必ず一緒に来てくれて、赤ちゃんができるように隣で祈ってくれた。命はお金じゃ買えないから、まだ妊娠可能な年齢である今のうちに、できるところまで治療の力を借りて頑張ってみようと手を取り合って努力してきた。

 

その甲斐あって、赤ちゃんを授かったと分かったときには喜び以上に怖さがあった。やっときてくれたこの命を逃すことはできまいと、妊娠出産にかかわることを最優先にしてきた。妊娠7ヶ月に至るまでも、不正出血や切迫などを経験し、自宅安静が1ヶ月以上続いたりしたが、家族はみんな理解してくれて私の体調を優先してきた。自営業で仕事をし続けてきた母は「仕事は50歳からでもいくらでもできる」が口癖で、厳しい人ではあるが私の状況を一番に理解してくれた。コロナ対策も含めて、この7ヶ月間、慎重に慎重に生活し続けてきた。自然妊娠した人を羨む気はないが、そこまで気にしなくても・・と言われることもあったが、こっちは何回も全身麻酔卵子を取り出し、移植し、祈るような気持ちでずっと過ごしてきたんだ。気持ち的には不妊治療していた3年間を含めて、妊娠3年7ヶ月くらいに感じる。自分だけが母親になりたいわけじゃない。夫や、親の喜ぶ顔が見たい、この世に新しく生まれてくる命を祝福したい。

 

いよいよ妊娠後期に入る。後期でコロナに罹患したら重症化の割合が高いらしく、最近はもうほとんど家から出ていない。ニュースで報道された方がどんな経緯だったかは分からないが、もうすべての命を助けられるキャパシティはこの国にはない。そこに至るまでの経緯が、人災に近いものであることが残念でならない。オリンピックをやめていれば・・鎖国していれば・・たくさんのタラレバで生きることができるはずだった命が亡くなってしまったことが、ただただ悔しくて悲しい。

 

政治家の皆さんの奥様が妊娠していて同じ状況になったら?苦労した末に授かった命だったら?みんな自分事にならないと分からないことが多い。でもだから、弱者の立場を想像して国を動かしていけるから政治家になったのではないのか。

今はとにかくこの嵐が過ぎるのを、身を潜めて待ち続けるしかない。どうか状況が好転しますように。国民がみな不安なく過ごせる世の中になりますように。